トキ消費とは?コト消費の先にある新たな消費行動を解説
2022.07.27近年「モノからコトヘ」と呼ばれる、商品を所有するのでなく体験に価値を置く消費行動が注目を集めています。こうしたコト消費の先にある新しい概念が、トキ消費です。
トキ消費とはその場やその時にしか味わうことができない消費を意味し、デジタルネイティブの世代を中心に新たな消費潮流として注目されています。
今回はトキ消費の概要や特徴、なぜトキ消費が注目されているのかその背景について解説します。
トキ消費とは?
トキ消費とは、博報堂生活総合研究所が2017年から提唱している新しい消費潮流です。その場やその時、その瞬間にしか味わうことができない体験から生まれる消費を意味します。
例えばオンラインでのライブ配信やウェビナーといった体験はトキ消費の代表的な事例です。またオリンピックやサッカーのワールドカップといったイベントも、その瞬間にしか味わうことができない体験という意味で、トキ消費に分類されます。
また、トキ消費の特徴として不特定多数の人がその体験に参加している点が挙げられます。この点は同じ体験に価値を置くコト消費との違いといえます。コト消費では、商品やサービスを購入することで得られる体験や経験に価値を置きますが、これは個人でも完結できる消費行動です。
一方のトキ消費は不特定多数がその時を「共有する」点が大きなポイントとなるため、個人ではなく集団で消費行動に参加するのが特徴です。
トキ消費の3つの特徴
では、トキ消費の特徴について詳しく見ていきましょう。トキ消費を提唱した博報堂では、トキ消費に次の3つの要件を定めています。
- 非再現性
- 参加性
- 貢献性
非再現性とは、時間や場所が限定され二度と同じ体験ができないことを意味します。限定イベントやライブ配信はまさに非再現性が生まれる事象で、この機会を逃すと二度と体験できないという心理が消費行動を後押しします。
参加性とは、不特定多数の人が参加して状況を共有することを意味します。個人でも完結するコト消費との大きな違いで、集団が同じ時間や空間を共有し、感動や体験を味わう点がトキ消費の特徴です。
最後の貢献性とは、イベントや体験の盛り上がりに貢献していると感じられることです。例えば、オンラインであればチャット機能でコメントを発信したり、投げ銭(オンライン上で配信者にお金を投げること)で支援するといった行動が挙げられます。その空間や体験に自らが能動的に関わり貢献することを意味します。
なぜトキ消費が注目を集めるのか?
では、なぜトキ消費がこれほど注目を集めているのでしょうか。
オンラインツールの普及がトキ消費を拡大させた
トキ消費が注目される最大の理由として、オンラインツールが普及した点が挙げられます。オンラインでいつでもどこでも不特定多数の人と繋がれる現代では、時や場所を共有するハードルが低くなりました。とくにスマホが多くの人に広がったことで、オンラインの世界は一気に身近なものとなりました。
トキ消費の3つの要件である非再現性・参加性・貢献性はオンラインとの親和性が高く、「オンラインツールの普及がトキ消費を拡大させた」といえます。
オフラインでの体験には、移動や時間の制限といった障壁が存在します。もちろんこうした障壁を超えることで感動的な体験を享受できる訳ですが、コロナ禍により移動や外出の制限が増えたことで、トキ消費へのニーズがさらに拡大しました。人と直接会えない環境のなかで、能動的にイベントに参加し、そこに貢献することは私たちが社会生活を続ける上で本能的に求めた消費行動だったと言えるかもしれません。
コンテンツが増えすぎた
トキ消費が広がった背景として、私たちが体験し楽しむためのコンテンツが増えすぎた点も理由に挙げられます。現在では映画館へ足を運ばなくても、スマホ一つで膨大な数の映画を視聴できます。音楽やファッションもサブスク化し、知りたい情報には誰もが無料でアクセスできる時代になりました。
一方であまりにコンテンツが増えすぎたことで、社会全体がコモディティ化したのも事実です。情報やコンテンツの新鮮さが失われたことで、私たちが感じる感動や刺激が弱まってきました。こうした状況のなかで、「今、この瞬間」にしか体験できないイベントに参加することは一つの自己表現といえます。感動や体験を味わえる空間としての価値も高く、ユーザーから好まれるようになりました。
まとめ
今回は新たな消費潮流として注目されるトキ消費について解説しました。
トキ消費とはその場やその時にしか味わうことができない消費を意味します。デジタルネイティブを中心に広がりを見せており、限定イベントやライブ配信など「その瞬間」しか 体験できない消費行動に価値を置きます。
またトキ消費では個人ではなく不特定多数の人と時間や空間を共有する「参加性」がポイントとなっています。この点は個人での体験に紐づくコト消費と違う点で、情報だけでなく体験までシャアするという若い世代の特徴がよくあらわれている部分です。