P2Cとは?ビジネスモデルや注目される背景、今後の展望を解説

EcWork編集部

P2Cとは?ビジネスモデルや注目される背景、今後の展望を解説

EcWork編集部

ここ数年企業が自社ECを使って直接商品を販売するD2C(Direct to Consumer)が大流行しましたが、そうした流れの中で新たなトレンドとなっているのがP2C(Person to Consumer)です。

今回はP2Cのビジネスモデルの特徴や、注目される背景、今後の展望について解説します。

P2Cとは?個人がECで直接販売するビジネスモデル

P2C とは

P2CはPerson to Consumerの略で、個人がECを使って直接商品を販売するビジネスモデルです。

たとえばSNSやYouTubeで影響力を持つインフルエンサーやユーチューバー、クリエイターがオリジナルブランドやグッズを販売する機会が増えています。その際に、販売方法を個人のECサイトにし、直接ユーザーへ向けて販売をします。

これまで影響力を蓄えてきたSNSやYouTubeで商品やブランドの魅力を発信し、自身の影響力を活かして販売につなげるビジネスモデルです。

P2Cのメリットは?

P2Cのメリットとして、個人でも自身の影響力を活かしてECビジネスを展開できる点が挙げられます。

たとえばECでもっともハードルが高いのが集客です。ネット上でユーザーを集めるために企業は広告費やコンテンツ制作費に費用をかけていますが、P2Cに取り組むインフルエンサーやユーチューバーはそもそも集客できる「個人のプラットフォーム(=自分のアカウントやチャンネル)」を持っています。

つまり、ゼロから集客をスタートせずとも、アカウントやチャンネルでファンに向けて商品のストーリーや機能性を紹介すれば、そこから一気に流入を稼げます。すでにファンとの関係性がある程度成熟していれば、ウェブ広告のような「広告臭」を省くことができ、スムーズな集客が可能となります。

D2Cとの違いは?

さてP2Cについて解説する際によく話題に挙がるのが、D2Cとの違いです。

違いはとてもシンプルで、P2Cは「個人が直接販売する」ビジネスモデルであるのに対して、D2Cは「企業が直接販売する」ビジネスモデルであるという点です。

D2Cは事業者が仲介業者を介さず、自社ECを使って商品を販売します。その仕組みはP2Cでもまったく同じで、販売する側が「個人」か「企業」かという点が大きな違いとなります。

なぜP2Cが注目されるのか

では、なぜP2Cが注目を集めているのでしょうか。

背景にあるのは2つの理由です。

理由1.人に紐づいた商品やサービスに人気が集まっている

1つ目は、人に紐づいた商品やサービスに人気が集まっている点です。

「ファンマーケティング」や「イミ消費」といったトレンドワードからも分かるように、近年の小売業界では人に紐づいた商品やサービスが人気を集めています。これはあまりに膨大な商品や情報が世に溢れたため、ユーザーが機能性だけで購入するのを躊躇うようになったためです。

たとえば、スマホを購入する場合、今やどのメーカーの商品でもハイスペックなカメラや機能が搭載されています。カメラの画素数や本体の処理スピードの速さは、日常生活では大差ない次元に進化を遂げています。ここまで商品が進化を遂げると、商品を購入する際の「決め手」が必要となってきます。

その決め手となるのが人です。「○○が紹介した」「○○がおすすめした」といった人に紐づく評価が、購入を決断する動機として重視されるようになりました。P2Cのビジネスモデルは、この決め手となる人そのものが商品を販売しています。つまり、ユーザーにとっては購入の可否を決断するハードルが低く設定されています。

また、ファンマーケティングの面から見れば、「推しを応援したい」という心理が集客や売上に反映されるのもポイントです。

理由2.個人が販売するプラットフォームが次々と登場している

2つ目の理由は、個人が販売するプラットフォームが次々と登場している点です。

インフルエンサーやユーチューバーの登場は、各SNSやYouTubeといったプラットフォームの登場が契機となりました。これまで特定の人物や場所でしか発表できなかったコンテンツを、誰もが無料で世界中に発信できるようになった訳です。

こうしたプラットフォームの進化は、EC業界でも広がっており、D2CではShopifyの登場や各種SNSでの情報発信がビジネスの拡大に寄与しました。

P2Cを支えるプラットフォームの進化も目覚ましいものがあり、たとえばShopifyでは月額5ドルで利用できるスタータープランをスタートし、クリエイターエコノミーの獲得に力を入れています。また、国内ではGMOが提供するSUZURIのように手軽に商品を販売できるツールや、noteのように誰でもビジネスをスタートできるプラットフォームが増えています。

またNFTをはじめデジタル空間でやり取りが完結できる新たなビジネスモデルが進化している点も、P2C市場が注目される理由の1つでしょう。

【ECWorkの読み】P2Cの今後の展望は?

ECの新たなビジネスモデルとして注目を集めるP2Cですが、今後はどのような展望が予想されるのでしょうか。

P2Cへの参入は増加すると予想。課題は個人の影響力に限界がある点

まずP2Cに取り組む個人は増加すると予想されます。手軽に個人がビジネスに参入できるフィールドはやはり魅力的です。またSNSやYouTubeは過当競争の状態にあり、新たな収益源としてP2Cを目指す個人は増えてくるでしょう。

一方でP2Cの弱点として、ビジネスを拡大させにくい点が挙げられます。これは個人の影響力が及ぶ範囲には限界があり、どこかのタイミングで頭打ちになるためです。

個人のファン向けの販売から一般ユーザーの販売へと移行していく

では、こうした状況を打破するには、どのような戦略が考えられるのでしょうか。たとえば、自社ECでの販売だけでなく、Amazonや楽天といったモールへの出店を検討するのはアイデアの一つです。

P2Cはファンだけを集客源としている限り、それ以上の拡大は期待できません。そこで、一般のユーザーとの接点を持つためにも、Amazonや楽天のようなモールでの販売を並行していくのは効果的です。つまり戦略的にファンだけを対象としたビジネスから、一般ユーザーへの販売へ移行していく方法です。

実はこうした動きはすでにD2Cでは頻繁に見られています。これまで自社ECで販売していた企業やブランドが、さらに事業をスケールさせる戦略としてコンビニや小売店に進出するケースが増えています。これまで築いてきたコアなファン層だけでなく、母数が多い市場を狙うことで売上を高めていくのが狙いです。

こうした動きが今後P2Cでも活発になると予想され、個人の影響力だけでなく一般ユーザーへ訴求するビジネスセンスが問われることになります。

まとめ

今回はP2Cのビジネスモデルや今後の展望について解説しました。

個人が直接ECで販売をおこなうP2Cは、インフルエンサーやユーチューバーといった本人の影響力の大きさをビジネスに活かした方法です。既存のファン層が集客や売上の後押しをするため、影響力を持つ個人ほどビジネスが軌道に乗りやすいと言えます。

一方で、自身の影響力がそのままマーケットの大きさとなるため、ビジネスをスケールしづらい点はネックです。今後P2Cでは、自身のテリトリーから飛び出してモールや実店舗、イベントを活用した新たな市場を開拓する動きが加速すると予想されます。コアなファン層を土台にしながら、新規層を開拓していくバランス感覚に長けたユーザーが商機を掴んでいくでしょう。