ついに3兆円を突破。最新のインターネット広告費から見える3つのポイントを解説

EcWork編集部

ついに3兆円を突破。最新のインターネット広告費から見える3つのポイントを解説

EcWork編集部

電通は2023年2月24日、日本の広告費に関して毎年調査している『2022年 日本の広告費』を発表しました。最新の調査で注目されたのがインターネット広告費で、その総額は史上初となる3兆円を突破。4マス(TV・新聞・雑誌・ラジオ)の広告費が減少を続けるなか、前年比14.3%増となる堅調な推移を見せています。

今回は最新調査の動向を図表をまじえて分かりやすく解説します。また同調査から伺える特徴的な傾向を3つのポイントで紹介しています。

※本記事では『2022年 日本の広告費』をはじめ電通の過去の電通の調査結果から記事・グラフを作成しています

2022年のネット広告費は3兆912億円

ネット広告費 4マス広告費 推移

電通が発表した『2022年 日本の広告費』の調査によると、2022年のネット広告費は3兆912億円。同調査でネット広告費が3兆円を突破したのは史上初。前年比で14.3%増と、インターネット広告の活況ぶりが伺えます。

ネット広告費は2021年にはじめて4マスの広告費を上回りましたが、本年の調査でも4マスの広告費が減少する一方で大きく数字を伸ばしています。

総広告費 推移

また、2022年の国内総広告費は7兆1,021億円で1947年の統計開始以来、過去最高額を記録しました。2007年には一時7兆円を突破しましたが、リーマンショックによる市場の冷え込みに加え、2011年の東日本大震災が追い打ちをかけ一時は5兆円台まで下落しました。

その後回復傾向に転じた広告費は、2020年のコロナ禍による世界的な景気低迷から一時金額を大きく落としますが、2022年後半からは感染終息の兆しが見え始め市場が勢いを取り戻し、最終的には過去最高額を記録しました。

ネット広告費の割合は43.5%に達する

過去最高額を記録した総広告費にネット広告費が寄与したデータとして、広告費の構成比率(総広告費に占める各広告費の割合)を見てみましょう。

広告費は大きく次の3つに分類されます。

広告分類内容
マスコミ四媒体広告費4マスに投下された広告費
インターネット広告費インターネットやアプリの広告掲載費
プロモーションメディア広告費屋外看板やDMなどプロモーション広告費

過去3年間の各分類の構成比率は次の通りです。

広告分類 2022年2021年2020年
マスコミ四媒体広告費33.8%36.1%36.6%
インターネット広告費43.5%39.8%36.2%
プロモーションメディア広告費22.7%24.1%27.2%

2022年の総広告費に占めるネット広告費の割合(構成比率)は43.5%。4マス広告費が33.8%、プロモーション広告費が22.7%という結果からもネット広告費の存在感の大きさが伺えます。ネット広告費は年々その構成比率を拡大しており、今後もインターネットを中心に市場が動くと予測されます。

最新調査から見える3つのポイント

ネット広告費 推移

ここまでインターネット広告を中心に、最新の広告費のデータを解説してきましたが、ここからは調査結果から見えてくる3つのポイントを紹介します。

1.検索連動型広告が22%の大幅増

広告費 構成比 2022
広告形態2021年2022年前年比
動画広告5,1285,92015.4%増
検索連動型広告7,9919,76622.2%増
ディスプレイ広告6,8567,3727.5%増
成果報酬型広告9409652.7%増
その他6577788.4%増

1つ目のポイントは検索連動型広告が前年比から22.2%の大幅増を記録した点です。これはコロナ禍以降顕著な動きで、広告主がデジタル媒体での顧客獲得や販促活動に力を入れているのが伺えます。

年々ユーザーはスマホやSNSを使い検索行動を経て商品を購入する傾向が強まっています。とくに若年層は慎重に商品を見極める傾向が強く、企業はこうした行動をふまえて検索連動型広告に積極的に資金を投下しています。

検索行動はユーザーの能動的な行動であり、ある程度商品や検索ワードへのモチベーションが高い点もポイントです。こうしたユーザーに対してピンポイントで広告を打つことで、費用対効果を高める狙いもあります。

2.動画広告への注目が高まる

2つ目は動画広告(ビデオ広告)への注目度が高まっている点です。

2022年の動画広告費は5,920億円で、前年比で15.4%増を記録しました。これは検索連動型広告に続く増加率で、とくにインストリーム広告の人気が高まっています。

動画コンテンツの間に挿入される「インストリーム広告」の広告費は3,456億円で全体の58.4%。一方ウェブ上の広告枠や記事のコンテンツなどで表示される「アウトストリーム広告」は2,463億円で全体の41.6%と、インストリーム広告の人気が伺えます。

動画広告の注目度が高まる理由として次の2つが挙げられます。1つはインターネットに接続できるコネクテッドTVが浸透し、動画広告に触れる機会が増えたため。若者のTV離れが叫ばれますが、ABEMA TVが全試合を無料配信したカタールW杯などではTVの大画面で視聴したいユーザーがコネクテッドTVの購入に走りました。同大会はネット配信のみだったため、この機会にシニア層もコネクテッドTVを購入。これまで動画広告は若年層がターゲットでしたが、シニア層にもアプローチできるとして、広告費増を後押ししました。

もう1つがソーシャルメディア人気。InstagramやYouTubeなどはすっかり生活に溶け込んだ存在として受け入れられています。またTikTokは若年層を中心に爆発的な人気をほこり、動画を視聴する頻度は格段に増えています。ユーザーと双方向にコミュニケーションを図れる点も企業側にとっては魅力で、動画広告を積極的に活用する理由となっています。

3.4マスの中で健闘するラジオ広告

3つ目は4マスの中で唯一前年比増を達成したラジオ広告の存在です。

媒体広告費の前年比割合
TV96.9%
新聞93.1%
雑誌98.0%
ラジオ102.1%

他の3媒体が前年から広告費を下落させるなか、ラジオ広告だけは増加を達成しています。背景にあるのが若年層を中心に浸透している「ながら作業」ブームです。

スマホで手軽に動画や音楽を視聴できる近年では、動画や音楽をBGMにして作業をするユーザーが増えています。音声配信アプリが人気を集めるのもこうしたユーザー行動と相性が良いためで、ラジオも同じような相性の良さが広告費増に繋がっています。

これは企業のコンテンツづくりからも伺える変化で、YouTubeのような動画配信コンテンツでも解説動画やながら視聴を前提としたコンテンツづくりが増えています。「タイパ(タイムパフォーマンス)」を意識するユーザーが増えている点も、理由の一つです。

まとめ

昨年の広告費調査では、インターネット広告費がはじめて4マスの広告費を上回ったことが大きな話題となりました。今年の調査ではネット広告費がさらに勢いを増し、前年比114%増で史上初となる3兆円を突破。4マスの広告費が前年比97.7%と減少し、約2億3千億円に留まった点もネット広告費の攻勢を強く印象付けました。

ネット広告費の内訳を詳しく見ると、若年層を中心とした消費行動の変化が伺えます。ソーシャルメディアやコネクテッドTVなどネットを中心としてコンテンツ消費が主流となったことで、動画広告が大きな伸びを見せています。また、商品購入前の検索行動を重視する「ネタバレ消費」の流行は、検索連動型広告の増加に大きく関連しています。

消費行動の変化が広告費の内訳に大きく影響を与えた結果となりましたが、今後はネット広告内での競争激化が焦点となるでしょう。ネット広告費が伸びているとはいえ、ユーザーの広告に対しての抵抗感は年々高まっています。いかに広告感をなくし、コンテンツを活用してPRにつなげるかは、今後事業者が注力すべきポイントとなりそうです。