日本でライブコマースへの注目が再燃。ECがLIVE配信に乗り出す理由
2023.02.08中国や東南アジアでは定番の購入方法として定着しているライブコマース。ライブでの動画配信とEC(Eコマース)を組みわせた販売手法ですが、当初日本では期待されたほどの盛り上がりは見られませんでした。しかしここにきて、日本でもライブコマースへの注目が再燃。EC各社も積極的に配信に乗り出しています。
今回はライブコマースの概要やなぜ日本での注目がいま再燃しているのかについて解説します。また成功事例もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ライブコマースとは?
ライブコマースは、SNSやプラットフォームを使って動画のライブ配信をしながら、ECでの商品購入に繋げる販売手法です。
ECサイトでの商品ページではわかりにくい素材の質感やサイズ感、実際の使用方法などを出演者が解説。ユーザーはコメントやチャット欄から質問することで、直接コミュニケーションが取れ、実店舗で買い物しているような購入体験を楽しめます。
事業者からすれば商品のメリットや特徴を訴求しやすいだけでなく、ユーザーとの関係を築くことでブランドや商品への愛着を育む効果が期待できます。
コロナ禍を契機に日本でもライブコマースが定着
ライブコマースは中国や東南アジアで火がつき、その後世界へと広がった歴史があります。日本でも2017年頃に最初のライブコマースブームが訪れましたが、その時は大きな成果は得られませんでした。
中国や東南アジアではコピー商品や粗悪な商品が多く出回っており、ECでもそうした商品が販売されていました。そこで事業者はライブ配信という手法を使って商品の品質や機能性を紹介。ユーザーも実店舗に足を運ばずに品定めができることから、ライブコマースがブームとなりました。
しかし日本では商品の品質や機能性が一定の水準にあり、中国や東南アジアのようにライブコマースの必要性がフォーカスされる場面は限られていました。当初は大手企業がこぞって参入したライブコマース市場でしたが、商機がないと分かると次々と撤退していきます。
そんな国内ライブコマース市場の転機となったのがコロナパンデミックです。自粛要請や緊急事態宣言を受けて外出行動が激減。実店舗を訪れて商品を手に取る機会が減り、ユーザーは信頼性の高い情報を求めるようになります。そこに刺さったのがライブコマースです。自宅で視聴できる点や、外出自粛でリアルなコミュニケーションが枯渇していた状況がライブコマースの強みと合致し、日本でも一気に市民権を得ました。
コマース分野だけでなくライブ配信が定着したのもコロナ禍以降の特徴です。インスタライブやYouTubeライブ配信、Pococha(ポコチャ)や17Liveといったさまざまなプラットフォームを利用して、ライブ動画を楽しむ文化が醸成されました。
国内でのライブコマースの成功事例とライブ配信のポイント
やっと日本でも市民権を得たライブコマースですが、これからEC事業者が配信に乗り出す際はどのようなポイントを押さえておく必要があるのでしょうか。国内でのライブコマースの成功事例を参考に、ライブ配信のポイントを解説します。
1.COHINA│連続配信でユーザーとの強固な関係性を構築
まずご紹介するのが「COHINA」です。150cm前後の低身長・小柄女性向けのアパレルを展開する同社では、2018年の創業初期からインスタでのライブ配信をスタート。この配信は毎日続けられ、実に1,200日連続配信(2022年12月現在)を達成するなど継続的な活動を続けてきました。
COHINA -150cm前後の小柄女性向けブランド-(@cohina.official)がシェアした投稿
出典:COHINAインスタグラム
継続して配信を続けることで、視聴者やインスタのフォロワー数が増加。次第にCOHINAのライブ配信を視聴するのがルーティン化するユーザーも登場するなど、ブランド認知と商品訴求に絶大な効果を発揮しました。インスタにはEC機能はないものの、ショッピング機能を活用して代用。現在では月商1億円を超えるD2Cの代表格へと成長しています。
ポイントは連続配信により、ユーザーと強固な関係性を構築したこと。創業間もないD2Cブランドにとって、ブランドを知ってもらい信頼関係を構築する作業はとても重要です。COHINAはコツコツと配信を続けることでユーザーとの関係を築き、ブランドへの信頼を獲得しました。
2.資生堂│欲しい情報と限定感
大手化粧品ブランドの資生堂では、ブランドの旗艦店「SHISEIDO GLOBAL FLAGSHIP STORE」を使ったライブコマースに力を入れています。
資生堂の美容部員による化粧品の紹介や使用方法、メイク解説を配信。自社のECから直接商品を購入できる仕組みで、成果を上げています。資生堂のようにブランドイメージが強い企業は、情報への信頼性が担保されています。同社はこの強みを活かして、自社の美容部員による専門戦の高いノウハウを提供。ユーザーが「欲しい」情報を配信してくれる納得感が支持を集めています。
また配信を視聴したユーザー向けのクーポンを発行するなど、限定感を演出する仕掛けもポイントです。
3.ベイクルーズ│テーマ性のある配信でユーザーを狙い撃ち
人気ブランドを複数展開するファッションブランドの「ベイクルーズ」。同社でもライブコマースは大きな成果を上げています。
ベイクルーズのライブコマース「LIVE STYLING」では、毎回取り上げるブランドや出演者を事前に告知。例えば出演者のプロフィールには身長が記載されるなど、ユーザーがどのモデルを参考にすればいいか事前に把握できます。
また毎回のテーマもはっきりしており、
- 秋のおすすめコーデ
- 7,000円以下で購入できる
- みんなで投票して人気コーデを決める
など、ユーザーを狙い撃ちしたライブ配信が特徴です。テーマが決まっていれば、「ライブ動画を見たものの、自分がイメージしていた内容じゃない…」といったガッカリ感を減らせます。またある程度ターゲットを絞ることでモチベーションの高いユーザーが集まり、ECでのコンバージョンに繋がりやすいという点もポイントです。
まとめ
今回は日本であらためて注目が集まるライブコマースについてご紹介しました。
日本では2017年頃にライブコマースが注目されましたが、当時はユーザーがライブ配信に馴染みがなく、この手法のメリットを感じにくい状況でした。しかしコロナ禍によりライブ配信が市民権を得ると、ライブコマースへの注目が再燃。近年はEC事業者もあらためて配信に乗り出すなど、新たな展開を見せています。
国内での成功事例も増えているだけに、一気にECでの存在感を高めるかもしれません。