ECの現状分析に役立つSWOT分析とは?フレームワークの用途や活用方法を解説
2023.06.21ECでの経営戦略や事業戦略を考えるうえで、自社の現状分析は不可欠なものです。正確に自分達の「立ち位置」を把握することが、最適な戦略策定につながります。
今回はそんな現状分析に役立つフレームワークとしてSWOT分析をご紹介します。フレームワークの用途や、具体的な活用方法について解説していますので、分析手法を取り入れたい方はぜひ参考にしてください。
SWOT分析とは?
SWOT分析とは、自社の事業を内部環境と外部環境の両面から分析するフレームワークのことです。
内部環境とは自社の資産やブランド力、サービス内容など、自分達でコントロールできる要素を意味します。
外部環境とは市場のトレンドや競合の動向、社会情勢など自分達ではコントロールできない要素を意味します。
この内部環境と外部環境をそれぞれ強みと弱みに分類し、4つの要素を使って分析を行うのがSWOT分析です。SWOTはそれぞれStrengths(強み)、Weeknesses(弱み)、Oppoptunity(機会)、Thread(脅威)の頭文字を意味し、これらを2×2のマトリクスに落とし込んで分析を行います。
Strengths(強み) | 自社の持つ強みや長所 |
Weeknesses(弱み) | 自社の持つ弱みや短所 |
Oppoptunity(機会) | 自社の追い風となり得る外的要素 |
Thread(脅威) | 自社の逆風となり得る外的要素 |
たとえば、ヨーロッパの輸入雑貨を取り扱うECサイトの場合、次のようなSWOTが考えられます。
このように内部環境と外部環境のそれぞれの強みと弱みを客観的に把握することで、自社の現状分析や今後の戦略策定に結び付けていきます。
なぜSWOT分析が必要なのか?
素朴な疑問として、なぜSWOT分析が必要なのでしょうか。理由は大きく2つです。
1つ目は自社の現状を正確に把握するため。たとえば、現在の事業が行き詰まっている場合、「どこに課題があるのか」「どう改善すればいいのか」を手探りで探るのは効率が悪いといえます。
また、内部環境のような自社の評価にはどうしても主観的な評価が加わりがちです。後ほど詳述しますが、SWOT分析では4つの要素をかけ合わせて分析するクロスSWOTという手法を用います。これは、多角的な視点から現状を把握できるため、主観的な要素を可能な限り排除し、正確な現状分析が可能となります。
2つ目は事業の将来性やリスクを把握するため。新規事業に取り組む場合にSWOT分析を用いると、新規事業の強みだけでなく想定させるリスクも予測できます。たとえば、事業参入当初は競合がいない状態でも、将来的に外部環境として競合が参入してくれば経営上のリスクが発生します。このように、あらかじめ想定されるメリットやデメリットを客観的に把握し、どのような対策を講じておけばいいのか、先回りして検討できます。
SWOT分析の活用法
ここからは実際にSWOT分析の活用方法について解説します。
1.外部環境を書き出す
まずは外部環境のOppoptunity(機会)とThread(脅威)を書き出していきましょう。
自社でコントロールできる内部環境は、どうしても主観的な要素が反映されがちです。また外部環境によって内部環境が変化する可能性もあるため、まずは自社でコントロールできない外部環境から書き出していきます。
具体的には、経済や景気の動向、法規制や生活スタイル、新技術の開発といったマクロ環境と、自社に関りの深いミクロ環境にわけて書き出していきましょう。たとえば、コロナ禍のパンデミックや巣ごもり消費の増加は、社会全体に影響が大きいマクロ環境に挙げられます。また自社が子ども向けの商品を扱っているなら、少子化や人口減少といった要素はミクロ環境に挙げられるでしょう。
このように、大きな視野(マクロ)と小さな視野(ミクロ)の両面から要素を書き出していくことで、より正確な現状把握につながります。
2.内部環境を書き出す
次に自社に関連する内部環境を書き出していきます。
内部環境はどうしても主観的な要素が反映されがちです。そこで数値や他社との比較といった相対的な評価を用いると客観的な分析ができます。消費者の認知やブランド力、品質や価格、人材の数やノウハウなど、考えられる内部環境を洗い出し、要素を書き出していきましょう。
3.クロスSWOT分析をおこなう
外部環境と内部環境が出揃ったら、クロスSWOT分析をおこないます。
クロスSWOT分析とは、4つの要素をかけ合わせて分析する手法です。「機会×強み」「脅威×強み」「機会×弱み」「脅威×弱み」といった具合になります。
【機会×強み】
機会×強みはクロスSWOT分析でもっとも重要な部分です。自社が一番強みを発揮できる部分で、業績を伸ばして事業を成長させるうえで注力すべきポイントです。まずはこの部分の施策を徹底的に取り組んでいくことが大切となります。
【脅威×強み】
脅威×強みでは、外部環境で予想される逆風に対して自社の強みで対抗できないかを検討する際に役立ちます。たとえば、自社よりも安い製品を他社が発売した場合、「自社商品の品質で勝負できないか?」という対抗策が考えられます。品質の高さを売りにすることで脅威を回避できるだけでなく、「品質の良い商品を販売している」というブランドイメージを根付かせるチャンスも生まれます。
【機会×弱み】
機会×弱みでは、自社の弱みにより事業機会を取りこぼさないための戦略を考えます。たとえば、SNSでの発信が少なく潜在的なユーザーを確保できていないなら、SNSの更新に注力するといった施策が考えられます。またスマホユーザーが多いにも関わらず、スマホ向けのコンテンツが少ないといった弱みがあるなら、デザインやUIの改善に取り組むといった施策が検討できるでしょう。
【脅威×弱み】
最後に脅威×弱みは事業にとってもっともウィークポイントとなる部分です。たとえば、商品の仕入れを海外からの輸入に依存しているにも関わらず、円安による輸入コストが高くなるといった事態は、事業に大きなダメ―ジとなります。
こういったケースではまず影響を最小限に抑えることを意識しましょう。在庫管理の徹底や流通コストの見直しなど自分達で取り組めることから徹底していきます。同時に新たな仕入れ先の選定や、国内での仕入れ先の確保といった対策を探っていきます。
とはいえ、こうした対策でも歯が立たないケースでは部門からの徹底や事業廃止といった被害を最小限に食い止める決断も必要です。新規事業でSWOT分析に取り組む場合は、脅威×弱みの「最悪のケースにどう対処するか」「その状況に陥った場合の撤退ラインをどこに設定するか」といった方法で分析を活用するのも効果的でしょう。
まとめ
今回はECでの経営戦略や事業戦略を考えるうえの役に立つSWOT分析について解説しました。
SWOT分析は、自社の事業を客観的に把握し、「どこに強みがあり、どこに弱みがあるのか」を洗い出せます。また、それぞれの要素をかけ合わせて分析するクロスSWOTを用いれば、より解像度の高い課題分析や施策検討に繋げることができます。
既存の事業だけでなく、新規事業の立ち上げ前に事業リスクを把握する目的にも役立つため、経営戦略を練るうえでの参考材料として活用できます。