SGEを実際に使って見えてきた今後の検索流入のあり方を考察
2023.09.20Googleが2023年5月10日に発表したSGE(Search Generative Experience)。検索エンジンに言語生成AIを組み込む仕組みですが、日本でも2023年8月30日にデモ版となる「Search Labs」がいよいよ公開されました。
ECやWebのマーケターにとってはSEOへの影響が気になるところですが、今回は実際にSGEを使って見えてきた今後の検索流入のあり方を考察します。登録方法や解除方法についても解説していますので、実際に自分で試してみたい方もぜひ参考にしてください。
目次
SGEとは?
SGEとはSearch Generative Experienceの頭文字を取った言葉で、検索エンジンに生成系AIを組み込む仕組みを意味します。
2023年5月10日にGoogleが新しいプロダクトを紹介する「Google I/O」で発表されたもので、Googleの検索エンジンに生成AIを組み合わせることで、ユーザーが質問内容に対話型で回答していく仕組みとなっています。
日本国内での公開は未定とされてきましたが、2023年8月30日についにデモ版が実装されました。「Search Labs」と名付けられたデモ版はGoogleアカウントを持っているユーザーなら誰でも無料で登録ができ、SGEの機能を実体験できます。
SGEの登録方法や解除方法
さっそく実際にSGEを使った検索エンジンがどのように変化したのかを見ていきます。その前に、SGEのデモ版となるSearch Labsへの登録方法や解除方法をご紹介します。
登録方法│SGE(Search Labs)の登録は画面右上のアイコンから簡単にできる
SGEのデモ版に位置づけられるSearch Labsへの登録は実に簡単です。以下の3つの条件に該当するユーザーなら誰でも無料で登録が可能となっています。
- Chromeブラウザ、ios・Android端末のGoogleアプリであること
- 18歳以上であること
- 個人のGoogleアカウントであること(Google Workspaceアカウントは使用不可)
ではさっそく登録方法を見ていきましょう。
①まずはブラウザ(アプリも同様)の画面右上にあるフラスコのようなアイコンをクリックします。
②次に、画面に表示された「SGEを有効にする」というボタンをオンにします。
③するとGoogleからSGEに関するプライバシーポリシーが表示されます。内容を確認し問題がなければ、同意するを選択します。
④検索エンジンに戻り、いつもの要領で検索ワードを入力しましょう。すると生成AIが対応する検索条件であれば、上記の画像のようにSGEで生成された文章が表示されます。画面上では色つきの背景で表示され、これまでの検索結果はSGEの下部分に表示されるようになります。
解除方法│登録時と同じく画面右上のアイコンから設定する
さて、SGEを解除する場合も作業は簡単です。登録時と同じようにブラウザ(アプリも同様)の画面右上からSearch Labsへアクセスし、「SGEを有効にする」のボタンをオフにします。これで元の検索エンジンの状態に戻るので、とても簡単です。
SGEでGoogleの検索画面はどう変わったのか?
ここからはSGEで表示された検索画面を見ながら、どのような変化があったのかを詳しく見ていきます。
生成AIと対話しながらの検索体験が可能となる
上記の画像は「EC とは」という検索KWで表示されたSGEの結果です。画面を説明するために、便宜上①~④の番号を打っています。
まず①は検索KWに対し生成AIによって作られた回答です。従来のGoogleの検索ディスクリプションや強調スニペットに比べあきらかに文字数が多く、ボリュームのある内容となっています。ユーザーがこの文章だけを読んでも疑問が解決するようになっています。
②の部分では検索内容に関連するページが表示されています。実際に各ページをクリックするとコンテンツを閲覧でき、ユーザーはより知識や情報を深掘りできます。
次に、③の部分では検索KWの情報に追加で質問を行えます。いくつか予想される質問項目が表示されており、これをクリックすることでさらに疑問を解消できます。
上記の画像は質問項目にあった「EC化とはどういう意味ですか?」をクリックした場合の画面です。「EC とは」という検索結果からまるでチャット画面のように表示されるのがポイントで、ユーザーは生成AIとの対話をするようにして、検索体験を進められます。
また質問項目にない内容でも、「追加で聞く」をクリックして質問を入力すると回答が表示されます。
上記では「ECの市場規模はどれくらいですか」と質問を入力し、それに対しての回答が表示されました。
④の部分では、フラスコのアイコンをクリックするとSearch Labsの内容に関して説明ページが表示されます。またその横にはGoodボタンとBadボタンが用意されており、ユーザーが生成AIの回答に満足したかを評価できる仕組みとなっています。これはGoogle側がSGEの改修や改善に役立てるために使用されると予想されます。
SGEで表示されない項目もある
さて、SGEでは生成AIを使って検索KWに対しての回答を表示しますが、ワードや質問内容によっては「AIによる概要を利用できません」といった表示がされます。ワードや質問の仕方を変更すると表示されるといったケースもあるため、まだバランスを調整している段階です。
今回のSearch LabsによるSGEのデモは2024年2月までと予告されており、Googleとしてもまずはユーザーの反応や機能としてどこまで可能性があるのかをこの期間でテストする意味合いが大きいといえます。
SGEでどう変わる?今後の検索流入のあり方
ここまで、日本でも公開がスタートしたSGEについて詳しく解説してきました。では、実際に筆者が使用した体験も踏まえながら、今後の検索流入のあり方についていくつか考察していきます。
1.辞書型のコンテンツへの流入は減少する可能性がある
用語を取り上げて解説する「辞書型」コンテンツへの流入は、減少する可能性があります。SGEのような生成AIは、普遍的な情報に強い特性を持っています。例えばトレンド用語を解説するような記事はある程度普遍的なジャンルで、生成AIが情報をまとめるのが得意な領域です。
今回SGEを実際に使用してみても、こうした普遍的な情報をまとめる精度は非常に高いと感じました。加えて、チャット形式で情報を深掘りしていくとなると、検索体験がSGEのみで完結する恐れがあります。コンテンツをいくら量産しても、クリックされないとなれば事業者には大きな痛手です。
2.関連コンテンツや参照元を狙う戦略がSEOのトレンドになりそう
辞書型コンテンツの流入減が予想される一方で、関連コンテンツや参照元に取り上げられるコンテンツを目指す流れは、今後のSEOでトレンドとなる可能性があります。
上記の画像は「BNPL ビジネスモデル」のKWで表示されたSGEの画面です。ここには本ブログのコンテンツが2つ関連コンテンツとして表示されています。SGEの表示画面が本リリース後も現状のままとなれば、この“一等地”に自社コンテンツが表示されるのは大きなメリットです。
今後SGEの検証や考察が深まれば、どのような意図で関連コンテンツが表示されるか仮説が登場するでしょう。この仮説を元に、いかに関連コンテンツに表示させるかを競うSEOがトレンドとなる可能性があります。
またこれはMicrosoftがSGEに先だってリリースした、BingのAI検索機能でも同じような構造が見受けられます。
上記の画像はBingの生成AIを使った検索画面です。「EC とは」に対する回答と合わせて、参照元としたサイトURLが表示されます。
カーソルを当てることでもURLが表示され、ユーザーがより深く情報を調べたい場合はURL先のコンテンツを表示します。生成AIはあくまでも元となる情報やデータが必要です。SGEで検索画面が大きく変化しても、関連コンテンツや参照元が表示される仕組みとなれば、この分野を狙う競争が激化しそうです。
3.体験ベースのコンテンツへの需要がさらに増加する
SGEを実際に使用して感じたのは、情報をまとめる能力には長けているものの、「実際のところはどうなの?」「この商品を購入してもいいの」といったユーザーの深い検索意図までは対応しきれないという点です。
例えばECで商品を購入する場合、生成AIで検索しても公式サイトの文言や商品紹介といった「表向き」の情報しか表示されません。しかしユーザーが求めているのはそうした“建前”ではなく、口コミやレビューのような“本音”です。実際に使ってみた・購入してみた・比較してみたといった、体験ベースのコンテンツを求めています。Google的にいえばEEATを満たすようなコンテンツです。
SGEをはじめ生成AIが検索領域に深く浸透してくれば、こうした体験ベースのコンテンツへの需要はさらに増加すると予想されます。ここがEC事業者やマーケターにとっての勝機(商機でもある)で、今後目指すべきコンテンツの方向性が隠れています。
まとめ
今回はGoogleでリリースされたSGEについて、実際に使用したうえでの考察をご紹介しました。
SGEの検索画面は予想されていたより表示スペースが大きく、検索体験への影響度はかなり大きいといえます。とはいえこれで「SEOが終わる」といった考え方はやや早計で、EEATを満たした体験型のコンテンツや、ユーザーのニーズや疑問、悩みにしっかり応える質の高いコンテンツは今後もクリックされ続けるでしょう。とくに自社で商品を扱うEC事業者は、レビュー系や商品紹介系の記事にシフトするいいタイミングといます。
SGEに限らず、テクノロジーの進化に合わせてコンテンツのあり方も変化させていくのが、重要なポイントとなってきます。