Shopify(ショッピファイ)がAmazonキラーと呼ばれる理由と誤解

EcWork編集部

Shopify(ショッピファイ)がAmazonキラーと呼ばれる理由と誤解

EcWork編集部

新興のEC向けマルチチャネルプラットフォームとして、世界規模での成長を続けるShopify(ショッピファイ)。同社を「Amazonキラー」と形容する識者も多く、EC業界では絶対に押さえておきたいトレンドワードとして注目を集めています。

では、ShopifyがAmazonキラーと呼ばれる理由はどこにあるのでしょうか?また、本当にAmazonを凌ぐほどのポテンシャルを有しているのでしょうか。

ShopifyがAmazonキラーと呼ばれる3つの理由

Shopify

Shopifyはカナダのオタワに本社を構えるECプラットフォームサービスです。

Shopify 株価 推移

2006年に設立されると、2015年5月にニューヨーク証券取引所に上場。上場直後の株価は28USドルでしたが、その後爆発的な成長を遂げ、2021年7月には1,643USドルの高値を記録しました。上場から約6年で株価は58倍に値上がりし、爆発的なスピードで企業価値を高めています。こうした成長を受けて、ShopifyをEC最大手のAmazonを打ち倒す「Amazonキラー」と形容する識者も少なくありません。

ただ、ShopifyがAmazonキラーと呼ばれる理由は、その成長スピードだけが理由ではありません。AmazonにはないShopifyならではのサービスの特徴も理由に含まれています。では、具体的にShopifyのどのような点が評価されているのか、Amazonとの比較を交えながら見ていきましょう。

1.低コストで独自性の高いサイトを構築できる

Shopifyが評価される理由に、運用コストの低さとカスタマイズ性の高さが挙げられます。

Shopifyの料金設定は、月額料金によるサブスクリプションモデルで、基本となるベーシックプランは29USドル(1ドル110円計算で月額3,190円)に設定されています。一方のAmazonは月額4,900円に加え、商品が購入された際の販売手数料が発生します。

また、Shopifyは自社のオリジナリティを発揮できるカスタマイズ性の高さも魅力です。Amazonは統一したプラットフォームで商品を販売するため、どうしても「Amazonで購入する」という印象が強くなってしまいます。Shopifyは自社サイトをデザインテンプレートやアプリ機能を利用して簡単に構築することが可能。ブランドイメージを強く発信することで、他社との差別化や世界観の構築を実現できます。

2.マルチチャネルで販売が可能

Shopifyは外部連携機能に優れたマルチチャネルプラットフォームとしての顔も持っています。

Shopifyを使ってFacebookやInstagramといったSNSにEC機能を付与したり、ブログやブランドサイトなどのオウンドメディアを運営しカートボタンから商品を購入することも可能です。つまりShopifyで一度サイトを構築すれば、わざわざ他サイト(他のツール)にECを構築する手間が必要なくなるということ。これは事業者にとっては非常に便利です。また、20を超える言語に対応しているため、越境ECを手軽に始められるのもメリットの1つ。

一方のAmazonはあくまでもAmazonのサービスとして商品を販売することになるため、マルチチャネルの販売では別途サイトを構築する手間が必要となります。

3.巨大プラットフォームの束縛から解放される

ShopifyがAmazonキラーと呼ばれる最大の理由が、巨大プラットフォームの束縛から解放されるという点ではないでしょうか。

GAFAMをはじめとした巨大プラットフォームはその勢力を大きく拡大し、世界のビジネスにおいてなくてはならいな存在へと成長しました。

一方で、こうした影響力の高さが中小規模の事業者にとっては負担となっています。手数料やプラットフォームのルール内での運営など、何かと束縛される部分も多く、独自のサイト運営が実現できない葛藤を抱えるケースも少なくありません。また、ECにおいて貴重な資産となる顧客データをプラットフォーム側も利用できるため、自社でのデータ蓄積が進まず、いつまでも「主従関係」を崩すことができない点もネックでした。

Shopifyは低コストでカスタマイズ性にも優れ、柔軟性の高いサイト運営を実現できます。Amazonという存在に頼ることなく、自社でECを運営するという意味では、「束縛から解放される」と表現することができるでしょう。

Amazonキラーという言葉への誤解

さて、Shopifyが中小規模の事業者にとってプラットフォーマーの力を借りず、独自でECを運営できる希望の光であるという点は理解できました。こうした部分に期待感も加味されて「Amazonキラー」と呼ばれていますが、一方で言葉の意味が一人歩きしている印象も拭えません。

Shopifyを使えば売れるという意味ではない

まず大きな誤解として、Shopifyを使えば自社ECが売れるという認識は大きな誤解です。なぜAmazonがこれほどまでEC事業者から利用されるかというと、抜きん出た知名度を活かした集客力の高さを持っているからです。

ECにおいてもっともハードルが高いのが集客です。とくに新たに事業をスタートしたサイトはブランドの存在を知ってもらうことから始めなければなりません。こうした状況でAmazonのような知名度のあるプラットフォームの存在は集客を後押し、ブランドの信頼感を向上させる効果があります。

Shopifyを使うからといって、集客へのハードルが低くなる訳ではなく、むしろ、自社だけで集客やマーケティングに取り組むという意味では、ハードルは高くなると言えるでしょう。

AmazonとShopifyではそもそもの目的が違う

また、AmazonとShopifyではそもそものビジネスモデルが違う点も忘れてはなりません。Amazonはいわゆるモール型のビジネスモデルで、集客力のあるプラットフォームにブランドを出店してもらい、その対価として利益を得るという仕組みです。Shopifyはあくまでも自社ECを構築するためのサービスで、サービスを利用するサイトの売上が直接的に利益を生み出す仕組みではありません。

また、Amazonはユーザーがより安く・より便利に商品を購入できることを目指しています。Shopifyは事業者側にとって利便性が高いサービスを提供することを目指しています。

こうして比較すると、そもそものビジネスモデルや目的が違っており、「ShopifyがAmazonを打ち倒す」という構図は、やや誤解を招く表現といえるでしょう。

まとめ

とはいえ、ShopifyがEC事業者にとって自由かつ柔軟な事業運営を実現できる優良なサービスある点は変わりありません。自社サイトを構築するハードルやコストを低くし、EC事業への参入を協力に後押ししてくれます。また、自社の世界観やストーリーが重視されるという購買行動の変化も、今後独自色の高いECサイトが評価される追い風となります。

ShopifyにもAmazonとの連携機能は用意されており、サイトの成長やブランドの認知度にあわせて両者を上手く融合させることで、サイトの成長を加速させることも可能でしょう。