コロナ禍で需要を増すトランザクションレンディングとは?
2021.08.05長引くコロナ禍の影響で資金繰りが悪化する企業が増えている中、公的資金や銀行に代わる融資先としてニーズが高まっているのが、トランザクションレンディングです。
今回は、トランザクションレンディングとは何か?公的資金などに比べどのような点でメリットがあるのかについて解説します。
目次
トランザクションレンディングとは?
トランザクションレンディングとは、売買や資金決済、顧客評価などの取引履歴(トランザクション)を元に融資を行う新しい融資形態です。金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせたFinTech(フィンテック)を代表する言葉の1つで、近年大きな注目を集めています。
従来までの事業や財務・年収情報を元に借入条件を決定する伝統的な融資とは異なり、取引データを活用することで新しい尺度での信用度を算定。これにより、短い審査期間や少額からの融資、オンラインでの決済など、事業者のニーズに応じた柔軟な融資実現が可能となりました。
膨大なデータを元に信用スコアを算出する
例えば、EC事業では売上情報や在庫情報、入出金情報など膨大なデータを保有しています。こうしたデータは外部サービスと連携しているケースがほとんどで、データの信頼性は非常に高いといえます。具体的には、クレジット決済やキャッシュレス決済、在庫管理システムや会計ソフトなどが挙げられるでしょう。
トランザクションレンディングではこうしたデジタルデータをAIや最新のデジタル技術を使って詳細に分析。スピーディーに企業の信用スコアを算出し、そこから融資の判断や融資限度額、利率などの融資条件を決定します。企業は従来までの公的資金や銀行で必要だった決算書の提出や、長い審査機関をスキップして資金調達を実施できます。
EC向けのトランザクションレンディングのサービスとしては、「GMO-PG トランザクションレンディング」や「楽天ビジネスローン」などが有名です。
コロナ禍で新たな融資先として注目が集める
トランザクションレンディングがあらためて注目を集めているのは、コロナ禍により多くの企業で資金繰りが悪化しているため。
相次ぐ緊急事態宣言や営業自粛要請により、中小企業を中心に多くの企業が厳しい資金繰りを強いられています。政策金融公庫など政府系の金融機関では積極的な資金の貸し出しを進めていますが、融資相談が殺到し融資が追いついていないのが現状です。また、もともと融資までの審査機関にある程度の時間を要するため、現在の企業ニーズとの齟齬が生まれています。
こうした状況でトランザクションレンディングは、政府系金融機関の融資実施までの「つなぎ融資」としてニーズが増加。スピーディーに融資が実施できるメリットから「事業を継続するためにいますぐ資金が必要」といった事業者の頼みの綱となっています。
トランザクションレンディングの今後の展望は?
コロナ禍で急速に需要が加速したトランザクションレンディングですが、今後はどのような展望が予想されるのでしょうか?
創業期や成長期の融資ニーズに対応
コロナ禍においては当面のつなぎ資金や運転資金としてのニーズが高いトランザクションレンディングですが、今後は創業期や成長期の企業を後押しする役割を担うとして期待されています。
例えば、コロナ禍の影響が少なかったIT企業やEC企業では、新たな成長に向けた資金調達の手段としてトランザクションレンディングを活用しています。とくに創業期や成長期の企業は与信判断が厳しく、公的資金や銀行では融資を受けられないケースも少なくありません。こうした企業にとってトランザクションレンディングはスピーディーに資金調達を実施できる有力な選択肢となります。
データの蓄積により多様な選択肢が生まれる
また、現在トランザクションレンディングの課題として、返済期限が1年などの短期に設定されている点が挙げられます。これは、与信判断を決定するためのデータの蓄積が、まだ進んでいないため。サービス提供側がデフォルト(貸し倒れ)を予想するには、デフォルトに関するデータが必要ですが、現状ではこの蓄積が不十分といえます。
しかしコロナ禍でトランザクションレンディングの利用が進みデータの蓄積が進めば、それに応じて正確な予想が可能となります。デフォルトを予想する精度が高まることで、返済期限を長く設定することや、より柔軟なサービス提供が可能となるでしょう。
企業側にとっては資金調達の選択肢が広がることを意味し、サービス利用の拡大が期待できます。
まとめ
今回は、コロナ禍でニーズが増えているトランザクションレンディングについてご紹介しました。
トランザクションレンディングは従来までの決算書を軸とした融資ではなく、取引データを活用することでスピーディーかつ柔軟な融資を実現することができます。コロナ禍では融資までの時間がかかる公的機関にかわり、資金繰りが苦しい事業者にとっての頼みの綱として注目が集まっています。
金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせたFinTech(フィンテック)の分野は、データの蓄積やテクノロジーの進歩がサービスの向上に直接反映されます。トランザクションレンディングの分野でも、今後データの蓄積が進むことでより柔軟なサービスの提供が予想されるでしょう。創業期や成長期の企業にとっては、スピーディーな資金調達を実施できることから、事業の成長を後押しする追い風としても期待されます。