NFTはECでも活用できるのか?今後の動向を考察

EcWork編集部

NFTはECでも活用できるのか?今後の動向を考察

EcWork編集部

前回の記事では、話題となっているNFTとは何かという疑問について解説しました。

今回は「NFTはECでも活用できるのか?」についてご紹介していきます。NFTの市場は爆発的な勢いで拡大していますが、今後ECと組み合わせることで新たな市場が生まれるとして、事業者からは大きな注目を集めています。

本記事ではNFT×ECの組み合わせで生まれる可能性に注目しながら、今後の動向について考察していきます。

NFTの市場規模は2兆円。25年には9兆円に達するとの試算も

NFTとは

NFTとはNon-Fungible Token(ノン-ファンジャブル トークン)の頭文字を取ったもので、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれています。

ネット上でやり取りされる唯一無二の価値を持ったデジタル資産を意味し、これまでデータの改ざんやコピーが可能だったデジタル資産を、ブロックチェーンの技術を使って、代替できない(=非代替)資産として価値を持たせることが可能となりました。

例えば「野球選手の直筆サインボール」や「ゴッホが描いた絵の原画」などは一点ものの資産として価値が高いものです。NFTではこうした現物資産と同様に、デジタル資産(デジタルアート・動画・音声など)であっても、世界に一つしかない商品だと証明し新たな価値を創出しました。

NonFungible.comの調査によると、NFTの市場規模は約2兆円(2021年)。2025年には9兆円に達するとの試算もあり、NFT市場は今後さらに拡大すると予測されます。

NFTとECの組み合わせで生まれる可能性を4つの視点で考察

さて今後ますます注目が集まるNFT市場ですが、EC事業者からも新たなビジネスチャンスが到来するのではないかと期待が高まっています。

ここからはNFT×ECの組み合わせから生まれる可能性を4つの視点から考察していきます。

1.商品の保存や発送の手間がいらない

1つ目は商品の保存や発送の手間がいらないこと。

デジタル資産であるNFTは現物が存在しません。あくまでデジタル上のデータが商品として価値を持ちます。従来のECのように商品の保存・保管や発送の手間がいらず、PC一つでビジネスを動かすことが可能です。

EC事業を展開する上で、商品管理や在庫の保管場所確保は運営上の課題に挙げられますが、NFTだけの販売に特化すればこうした課題を一気に解消できます。

ECプラットフォームとして近年目覚ましい成長を続けるShopifyでは、2021年7月にNFT販売機能を追加しました。現在は「アメリカに拠点を置くEC事業者限定」「Shopify Plusを利用する事業者のみ」という制約がありますが、今後日本を含め機能を世界展開させる可能性は十二分にあります。

すでにNFTを販売するプラットフォームがリリースされていることから、EC事業者がNFTビジネスに進出する流れは加速するでしょう。

2.これまで商品化できなかったものを販売できる

2つ目はこれまで商品化できなかったものを販売できること。

株式会社モバイルブック・ジェーピーでは2022年4月から、出版社が保有する原画やデータから高品質のアート作品を作成しNFTを付与して販売する「MasterDig」をスタートしました。

これまで一点もののアート作品は希少価値が高く、一般のユーザー向けに販売するにはハードルが高い商品でした。しかしMasterDigのようにデータから作成した商品にNFTを付与することで、複製画であっても新たな価値を生み出すことができます。これはECに新たな商品ジャンルが生まれるのと同義で、EC事業者にとってビジネスチャンスとなり得ます。

3.ECでの暗号資産取引の普及

暗号資産を使った取引がECで広がるのも、NFT×ECに期待されるポイントです。

暗号資産はまだまだ「投機的」な側面が強く、一般的なECでの取引では広がりをみせていません。しかしNFTには暗号資産と同じブロックチェーンの仕組みが利用されており、NFTの売買には暗号資産を利用できるサービスも増えています。

前述したShopifyでも暗号資産を使っての取引が可能で、ECでの暗号資産取引が普及する起爆剤となり得るでしょう。

4.体験型サービスや付加価値を提供できる

NFTを活用することで、ECで体験型のサービスや付加価値を提供できるのも今後予想される動きです。

例えば

  • 商品を購入した人限定で視聴できる動画をNFTで付与し商品に付加価値を加える
  • NFTをイベントのチケットとして活用し、ECユーザー限定イベントを開催する
  • イベント会場でNFTを発行し顧客体験の向上に繋げる

といった方法が考えられます。

ECでは「モノ」から「コト」へに代表される体験型のサービスがトレンドとなっています。さらに今後はリアルタイムでの体験に価値を見出す「トキ」消費が注目されていますが、NFTを使うことでこうした「コト」や「トキ」を提供できる点はNFT×ECの大きな可能性です。

まとめ

今回はNFTとECの組み合わせから生まれる可能性について解説しました。NFTは従来のECの課題であって商品の保存や発送の手間を省き、デジタル上で取引を完結することができます。また、アート作品のようにこれまで販売が難しかった商品にNFTを付与することで、新たな商品価値を持たせることができるのも強みです。

NFTは商品としての価値だけでなく、既存のECに付加価値を持たせる可能性を秘めています。EC事業者にとっては新たなマーケティング戦略や顧客獲得につながるチャンスです。今後の動向を追いつつ、自社の販売に活用できる方法を探っていきましょう。