【2022年最新版】EC市場規模に関するデータを考察

EcWork編集部

【2022年最新版】EC市場規模に関するデータを考察

EcWork編集部

2022年8月12日、経済産業省は「令和3年度デジタル取引環境整備事業(電子商取引に関する市場調査)」を発表しました。

この調査は毎年経済産業省が発表する統計データで、ECの市場規模の推移や現状を理解する参考材料として広く用いられています。

今回は最新の調査データと動向についての考察をご紹介します。2021年発表のデータではコロナ禍での影響が大きかったEC市場ですが、今回はどのような変化が見られるのでしょうか。

2021年度(令和3年度)のEC市場規模は過去最高額を記録

経済産業省が発表した「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」によると、国内のEC市場規模は各取引形態において過去最高額を記録したことが分かりました。

  • BtoC 20.7兆円(前年比7.35%増)
  • BtoB 372.7兆円(前年比11.3%増)
  • CtoC 2兆2,121億円(前年比12.9%増)

上記は取引形態ごとの市場規模ですが、いずれも前年比で増加を記録し、過去の統計データと比較しても最高額となっています。では、各取引形態ごとに詳細なデータと考察を見ていきましょう。

BtoCでは物販・デジタルが堅調もサービス分野は苦戦

BtoC EC 市場規模

BtoC ECの市場規模は20.7兆円で、前年の19.3兆円から7.35%の増加となりました。BtoC分野では昨年データを公開して以降初めて前年比からマイナス成長となりました(前々年度19.4兆円)。これは新型コロナウイルスの拡大による消費の冷え込みが影響した結果で、世界規模でのパンデミックがEC市場にも大きく影を落とした形となりました。

しかし昨年のデータでも、ECを利用して商品を購入した割合を意味するEC化率は過去最高(8.08%)となっており、「市場の勢いが衰えている訳ではない」という見解が聞かれました。今年のデータでは市場規模だけでなくEC化率も8.78%と最高を記録しており、見解が妥当だったと言えます。

一方でコロナ禍から市場が完全に回復したとは言えないのが現状です。

BtoC EC 分野別 市場規模

上記のデータはBtoC ECの分野別の市場規模を表したものですが、物販・デジタル系分野では堅調な成長が見られたものの、サービス系分野は1.29%増と苦戦が伺えます。前年度からは微増(4.5兆→4.6兆円)を記録したものの、コロナ禍前の水準(2019年は7.1兆円)には遠く、サービス系分野では苦戦が続いています。

BtoB市場はコロナ禍の影響から持ち直す

BtoB EC 市場規模

BtoB ECの市場規模は372.7兆円で前年比11.3%増となりました。前年はBtoC同様にコロナ禍の影響で352.9兆円から334.9兆円へとマイナス成長となっていましたが、本年度は大幅な回復傾向となりました。EC化率も33.5%→35.6%と増加傾向にあり、コロナ禍以前の状況まで回復したと言えそうです。

一方で今後懸念されるのが世界的な物流コストの上昇と円安の影響でしょう。2022年8月現在、コロナパンデミックによるサプライチェーンの混乱やウクライナ紛争による影響、日本円の円安傾向などBtoB市場に影響を与える材料が山積しています。市場規模の拡大は続くものの、物流コストの増加や利益率の減少といったリスクを抱えているだけに、今後の動向を注視しておく必要がありそうです。

CtoC市場は前年比12.9%増の大幅成長

CtoC EC 市場規模

CtoC ECでは2兆2,121億円と前年比12.9%の大幅成長を記録しました。コロナ禍による巣ごもり消費やフリマアプリ市場の成熟が市場規模に表れた形です。

まだまだBtoCやBtoBに比べればマーケットに規模は小さいですが、今後も右肩上がりでの成長が期待され注目が集まっています。

スマホ経由の購入率が急激に増加している

さて、今回の調査データの中で注目すべきトピックとして、スマホ経由のEC利用が増加している点が挙げられます。

スマホ EC 市場規模

スマホを経由したBtoC ECの市場規模は2015年には1.9兆円で全体の27.4%でした。これが昨年の調査では市場規模が6.2兆円、スマホ経由の割合は50.9%と2人に1人はスマホからECを利用している結果となりました。

本年度のデータでも市場規模は6.9兆円、スマホ経由の割合は52.2%と増加傾向にあり「ECの購入がスマホに本格移行した」と考察できます。2020年には世帯あたりのスマートフォンの普及率が86.8%に達するなど、スマホは9割近くの国民に普及しています。9割を超えるのは時間問題と見られており、EC事業者もスマホベースでのサイト構築やマーケティング戦略を採用する必要があるでしょう

まとめ

今回の調査では昨年度コロナ禍で落ち込みをみせたEC市場が、また勢いを取り戻している結果が伺えました。

コロナ禍に実店舗からECへと業態を広げた・転換した企業は多く、EC業界だけで見ればある種の“バブル”のような状態が生まれています。一方で新規参入した企業の多くが、ECマーケのノウハウを持っておらず、集客や販売で苦戦している事例も見られています。

今後はこうした事業者向けのECサービスの需要の伸びが予想され、EC業界では新たな市場が生まれそうです。