売らない店とは?ECビジネスの新たな潮流を解説
2022.06.08近頃、「売らない店」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
売らない店とは、その場で商品の販売を行わず、実店舗を体験型のショーケースとして活用するお店のことです。
では、売らない店が増えた理由や、メリットはどこにあるのでしょうか?今回は、ECビジネスの新たな潮流として注目が集める売らない店について解説します。
目次
売らない店とは?
売らない店とは、その場で商品の販売は行わず、実店舗を体験型のショーケースとして活用するお店のことです。
実店舗では実際に商品を手に取って試したり、スタッフに詳細な説明や相談を行うことができます。販売は主にECで行い、実店舗での販売にこだわらない特徴から「売らない店」「売らない店舗」といった呼ばれ方で注目を集めています。
売らない店が増加した理由は?
売らない店が増加した理由に、ECやオンラインサービスが普及した点が挙げられます。
スマホやPCから24時間どこからでも商品を購入できる時代が到来したことで、実店舗の売上は低迷しました。また、わざわざ高い初期費用やテナント料を支払わなくても、ECで気軽に店舗をオープンできる点も実店舗の衰退に拍車をかけています。
一方で、ECでは商品の詳細や使用感を確認しづらい点や、実店舗のようなきめ細かな接客ができない点が課題でした。また、新興ブランドがいきなりECで販売をスタートしても、新規顧客の獲得が難しい点もネックです。
こうした実店舗とECそれぞれの課題を補う解決策として登場したのが、売らない店です。実店舗でのきめ細かな接客や体験、ECの利便性や手軽さを掛け合わせることで、新たな販売スタイルを構築。ユーザーの「モノからコトへ」に代表される体験型の消費行動への変化も、売らない店の価値を高めています。
大手百貨店などが続々と売らない店にオープン
売らない店のニーズを受け積極的な動きをみせているのが、大手百貨店です。
テナント離れが深刻化していた百貨店では、自分たちの強みである店舗スペースを売らない店へと貸し出し。テナント離れに歯止めをかけると共に、百貨店から足が遠のいた顧客やこれまで利用してこなかった潜在顧客の獲得に生かしています。
例えば、丸井グループは既存店舗の売らない店の割合が全体の約4割まで上昇。新規テナントの85%が売らない店となるなど、2026年までに全体の約7割が売らない店に置き換わると予想しています。
【参考記事】
「売らない店」の構成比4割突破のマルイ 急ピッチで進める「3重の収益構造とは」
売らない店の3つのメリット
さて、ここからは売らない店についてより深く知るために、売らない店のメリットを深堀していきます。
1.ユーザーとの接点づくりに生かせる
1つ目は、ユーザーとの接点づくりに生かせること。
売らない店は、体験に特化した店舗づくりや接客を提供しています。これまでブランドに興味を持たなかったユーザーや実際に試してから購入したかったユーザーとの接点を築くことができ、ECの集客やブランドの認知度を高めることができます。
また、店舗での体験をSNSで発信するなどUGCの獲得につながりやすい点もメリットです。
2.既存のECユーザーにより高い顧客体験を提供できる
2つ目は、既存のECユーザーにより高い顧客体験を提供できること。
顧客体験という部分に注目すると、ECよりも実店舗の方が施策の幅が広がり、より価値のある体験を提供できます。すでにECで購入している既存ユーザーに対して、接客や体験イベントを通してブランドの価値を深く訴求できれば、LTVやロイヤリティの向上につながります。
3.テナント料や人件費を抑えられる
3つ目は、テナント料や人件費を抑えられること。
売らない店は在庫を大量に陳列する必要がなく、ポップアップストアのように期間限定でオープンすることも可能です。これはテナント料や人件費といったコストを抑えることができ、出店へのハードルを低くすることができます。これも売らない店のメリットの1つです。
まとめ
今回は売らない店についてご紹介しました。 売らない店とは、商品をその場で購入せず、ショーケースとして活用するお店のことです。販売はECで行い、体験に特化した店舗運営で顧客との接点づくりやブランドの認知度を高めることを目的としています。
現代社会では、ECでの販売が一般的になり、実店舗に足を運ばず商品を購入できる環境が整っています。一方で、体験型の消費行動を求める世代が増えたことで、「売らない店」という新たなニーズも生まれました。 人間心理とは複雑で、利便性が高まるとあえて無駄を求め、無駄が増えると利便性を高めようとします。
この揺れ動く心理の隙間にこそビジネスチャンスがある訳ですが、売れない店はまさにその代表例といえるでしょう。