消費者庁がアフィリエイト広告の規制強化へ。ポイントはどこ?

EcWork編集部

消費者庁がアフィリエイト広告の規制強化へ。ポイントはどこ?

EcWork編集部

2021年6月、消費者庁ではアフィリエイト広告の規制強化に向けて議論するための検討会を立ち上げました。

ECを中心に利用が拡大しているアフィリエイト広告ですが、販売者による広告審査が行き届いていない点や、虚偽や誇大な広告が掲載されるといった課題も多く、近年は消費者被害の報告も増加傾向にあります。

今回は、消費者庁が広告規制の強化を検討する背景や、具体的にどのようなポイントが焦点となるのか解説します。

消費者庁がアフィリエイト広告の規制強化に向けて検討会を立ち上げ

消費者庁では2021年6月10日、アフィリエイト広告の運用や表示に関する議論を加速するため、『アフィリエイト広告等に関する検討会』を立ち上げました。

同検討会は「景表法の適用等に関する考え方」や「不当表示の未然防止等のための取り組み」などを議論することが目的。これまで度々広告運用の課題が問題視されてきたアフィリエイト広告の規制強化へ向けて、消費者庁が本格的に動き始めたことになります。

>>消費者庁がアフィリエイト広告の規制強化へ、「景表法の適用」など一定の結論を年内に公表

消費者庁が危惧するアフィリエイト広告の2つの問題点

今回消費者庁がアフィリエイト広告について検討会を立ち上げた理由には、大きく2つです。

  1. 販売者による広告審査が行き届かない
  2. 成果報酬を狙って虚偽・誇大な広告が掲載される

1つ目は、販売者による広告審査が行き届かないということ。

アフィリエイト広告は、商品を販売する本人(EC事業者など)ではなく、ブログや個人サイトを運用するアフィリエイターが広告を掲載します。広告の運用を仲介するASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)に登録し申請をすれば、基本的には誰でも広告を掲載することが可能です。そのため、販売者による広告審査が行き届かないケースが多く、広告掲載のチェック体制の脆弱性が問題視されてきました。

2つ目は、成果報酬を狙って虚偽や誇大な広告が掲載されるということ。

アフィリエイト広告はバナーのクリックや商品の購入により、アフィリエイター対してインセンティブが発生する成果報酬型の広告です。広告を掲載するアフィリエイターの中には、より成果を上げようと虚偽や誇大な表現で広告を掲載するケースが見られます。これは消費者に誤解を与えるだけでなく、金銭トラブルや健康被害に繋がる恐れがあります。

また、消費者庁がこのタイミングで検討会を立ち上げたのは、コロナ禍によるEC需要の増加により、アフィリエイト広告の掲載が以前よりも大幅に増加し、消費者トラブルが増加してことも理由に挙げられます。

最大の焦点は表示主体者の解釈

アフィリエイト広告の規制強化へ向けての議論の中で、最大の焦点となるのが表示主体者の解釈についてです。

現行法ではアフィリエイターは規制の対象外

現在、広告運用に関する内容を審査・取り締まる景品表示法(景表法)では、規制の対象を「商品を販売する供給者」と定めています。つまり、実際に商品を販売しないアフィリエイターは、規制の対象外となります。

例えば、アフィリエイト広告を掲載する販売主が、広告の掲載・運用に関する基準をアフィリエイターに一任していたとしましょう。この場合、アフィリエイターが虚偽・誇大な広告を掲載したとすると「責任の所在がどこになるのか?」という議論に発展します。現行法ではアフィリエイターは規制の対象外となっており、販売主が「アフィリエイター側が独断で虚偽・誇大な広告を掲載した」と主張すれば、規制の網をすり抜けてしまう恐れある訳です。

そのため、今後の議論では、アフィリエイト広告の表示主体者をどう解釈するのか?という点が焦点となってきます。現行法の「商品を販売する供給者」だけが対象となる解釈ではなく、アフィリエイターも表示主体者とし、規制の対象に含まれるかが注目されます。

薬機法ではすでにアフィリエイターが摘発される事例も

景品表示法においては規制の対象外とされるアフィリエイターですが、薬機法を適用することで摘発された事例もみられています。薬機法では規制対象を「何人も(何人規制)」と定めており、広告掲載に関わった人物のすべてが規制の対象に含まれます。

2021年3月17日には、大阪府警が薬機法違反の疑いでアフィリエイターの男性を書類送検しています。同府警では、2020年7月にも薬機法を適用することで、販売主従業員のほか、広告代理店、広告制作会社従業員を含めた計6人の逮捕に踏み切りました。

現行法では規制の外に位置しているアフィリエイターですが、消費者庁の検討会により規制が強化され、規制の対象となることも十分考えられます。また、アフィリエイト広告を運営する広告会社側への規制も、今後は強化されることが予想されます。

>>アフィリエイター摘発の衝撃。狭まる「アフィリエイト広告」の包囲網

>>広告業界に衝撃を与えた「ステラ漢方事件」から考えるWeb広告への問題意識

まとめ

今回は、消費者庁がアフィリエイト広告の規制強化を検討する背景や、具体的にどのようなポイントが焦点となるのかご紹介しました。

消費者庁では2021年の夏頃を目途に、アフィリエイト広告に対しての議論に一定の結論を出すとしています。今後広告の規制が強化されるのは必須で、販売主はもちろん、アフィリエイター側にも広告運用に対する正しい知識が求められます。また、広告会社も厳格な基準の作成や、質の高いアフィリエイターの確保に注力することが求められます。