EC事業者が知っておきたい、ASPサービスのメリット・デメリット

EcWork編集部

EC事業者が知っておきたい、ASPサービスのメリット・デメリット

EcWork編集部

ECサイトを構築する際、ASPサービスのカートシステムを利用している方も多いのではないでしょうか?

手軽にサイトの構築から運営まで行えるASPサービスですが、そのメリットやデメリットまでは、詳しくご存知ない方も多いかもしれません。そこで今回は、ASPサービスとは何か、サービスのメリットとデメリットはどこにあるのか、分かりやすくご紹介していきます。

これからASPサービスの導入を検討中の方はもちろん、すでに導入している方もサービスの強みと弱みをいま一度確認していきましょう。

ASPサービスとは?

まずは、「ASPサービス」とはどんなサービスなのか押さえておきましょう。ASPとは「アプリケーション・サービス・プロバイダ」の略称です。

インターネットを通じてソフトウェアを利用する仕組み

クラウドサービス

従来まで、ECサイトなどを構築するためには、ソフトウェアを購入してインストールする必要がありました。しかしASPでは、インターネットを通じてソフトウェアを利用することで、この手間を省略。ユーザーはインターネットのクラウド上のデータにアクセスすることで、各種サービスを利用できます。

ASPを介してサービスを提供するビジネス形態も増加傾向にあり、その総称として「ASPサービス」という呼び方も定着しています。

EC市場でもASPサービスが普及

EC市場の拡大にあわせて、ECサイトを構築する際もASPサービスを利用するケースが一般的となってきました。とくに、個人や小規模でサイトを立ち上げる際は、コストやスペース面で導入のハードルが低いASPサービスは人気が高く、EC市場拡大の追い風ともなっています。

総務省が発表した調査によれば、企業でASPなどを含むクラウドサービスを利用している割合は、2017年では全体の56.9%となっています。企業の約半数以上が、なんらかの形でクラウドサービスを利用している計算です。また、2013年の同様の調査では、利用状況は全体の33.1%にとどまっており、わずか4年で23.8ポイントも増加しています。

こうした調査結果からも、ASPサービス拡大の動きは読み取ることができるでしょう。

(出典)総務省「通信利用動向調査」(2018年)

ASPとSaaSの違いは?

さて、ASPサービスに関する疑問の中で多いのが「SaaSサービス」との違いです。そもそもASPとSaaSは、ASPが「サービスを提供する事業者」を意味するのに対し、SaaSは「サービスそのもの」を指しています。

ASPの弱点を改善し、より多くの事業者に提供できる仕組みとして広まったSaaSですが、国内では両者を同義として説明することも多く、一般的には同じものとして認識されています。また、サービス提供者によって言葉のニュアンスにも違いがあることから、サービスを利用する側が、厳密に両者を区分する必要はないでしょう。

本記事でも「ASPサービス」をASPとSaaSの両方を含んだ総称として呼称しています。

ASPサービスのメリットは?

メリット

ECをはじめ多くの事業者が利用しているASPサービスですが、サービスを利用するメリットはどこにあるのでしょうか?

メリット1.コストを削減できる

1つ目のメリットは、「コストを削減できる」ということ。

ASPサービスでは、従来までのソフトウェアを購入してインストールする方法に比べて、初期費用やランニングコストを安く抑えることができます。これは、サービスそのものがクラウド上に存在するためで、事業者は少ない負担でサービスを導入することが可能です。

また、ECサイトのASPサービスなどでは、月額料金によるサービスの提供が一般的です。これは、予算を見積もる上でもメリットが多く、プランを変更することで柔軟に事業の拡大・縮小を行うことができます。

くわえて、従来までは事業者側が行っていた、システムの運用や保守に掛かるコストを削減できる点も、ASPサービスのメリットと言えるでしょう。

メリット2.導入や管理・運用が簡単に行える

2つ目のメリットは、サービスの「導入や管理・運用が簡単に行える」ということ。

従来までのインストール型のサービスでは、サーバーの管理や運用のために、コストだけでなく物理的なスペース(オフィスや事務所)も必要でした。しかしASPサービスであれば、クラウド上にすべてのサービスが収まっているので、物理的なスペースはパソコン1つで済みます。

また、多くのASPサービスが競争・開発を進めたことで、サービスそのものの機能性が格段に高まり、専門的な知識がない事業者でも簡単にサービスを利用することが可能となりました。

専門的なノウハウを持つ人材の確保は、事業を展開する上での大きな課題です。しかし、サポート体制に優れたASPサービスなら、「専門分野はサービス会社に任せ、自分たちはマーケティング活動に集中する」といった効率的な事業運営を行えるでしょう。

事業者の負担を軽減し効率化が進めば、サービスの質や生産性の向上から、プラスのサイクルが生まれます。これもASPサービスの大きなメリットと言えるでしょう。

メリット3.場所を選ばない

ASPサービスのメリットとして、「場所を選ばない」という点も重要なポイントです。

クラウド上でサービスを利用するASPは、ネット環境さえあれば「いつでも・どこでも」サービスを利用することが可能です。時間的、地理的な制約を受けないということは、事業者側にとってさまざまな可能性を提供してくれます。

例えば、個人や小規模でネットショッピングを運用したいという方は、わざわざ大きなワークスペースを確保する必要がなく、自宅や出先でもショップ運営を行えます。また、中規模や大規模のECを運営する場合でも、商品の仕入先さえ確保すれば、事業所を人口や都市の規模で選ぶ必要もなくなるでしょう。

ビジネスに取り組む上での足かせを少なくしてくれるのも、ASPサービスのメリットと言えます。

ASPサービスのデメリットは?

デメリット

ここまでASPサービスのメリットをご紹介してきましたが、反対にサービスを利用する上でのデメリットはどこにあるのでしょうか?

デメリット1.カスタマイズができない

ASPサービスのデメリットとして、「カスタマイズができない」点が挙げられます。

ASPサービスでは、1つのパッケージとしてサービスを提供し、プランやオプションによって各種機能を追加する形でサービスを提供しています。そのため、1からオリジナルのサービスを構築することや、機能をカスタマイズすることができません。オリジナリティやブランディングを強く意識したい事業者にとっては、サービスによっては物足りなさを感じる可能性があるでしょう。

こうしたデメリットを解消したい場合は、ASPサービスを選ぶ際に、ある程度のカスタマイズ性が整っているサービスを選ぶ他ありません。また、ASPサービスの中には、フルスクラッチのサービスを提供しているケースもあるため、こうしたASPサービスを選んでみましょう。

デメリット2.ネット環境が必須となる

サービスを利用する際に、「ネット環境が必須となる」点も、ASPサービスのデメリットと言えるでしょう。

ソフトウェアをインストールする形式であれば、インターネットがない環境でもサービスを利用することができました。しかし、ASPサービスではクラウド上にサービスがあるため、ネット回線を通じてサービスにアクセスする手順が必須となります。

いたる所でネット環境が整備されている現代ですが、回線トラブルやシステム障害といった理由から、ネットに接続できないケースも想定されます。この部分は、ASPサービスの最大の弱点と言えるでしょう。

また、サービスがネットワークの接続状況に左右されるのもデメリットの1つです。例えばECサイトを運営する場合、ネットの接続状況が悪ければ、サービスはもちろん、ユーザーがサイトへアクセスすることができない可能性があります。この点も、ASPサービスを利用する際のリスクとしてしっかり認識しておきましょう。

デメリット3.セキュリティを外部に委ねる必要がある

ASPサービスのデメリット3つ目は、「セキュリティを外部に委ねる必要がある」ということです。

ASPサービスではクラウドを利用したサービスの特性上、セキュリティ全般をはじめとした、システムの管理・保守をサービス会社に任せることが多くなります。これは、重要な顧客データや自社の販売データを、外部に委ねる必要があるということ。もちろんサービス会社は情報の管理や保守には万全を期すでしょうが、セキュリティ上のリスクを抱えることには違いありません。これも、ネットワーク環境を利用してサービスを提供するASPの弱点と言えます。

ASPサービスを選ぶ際は、「情報の管理や保守といったセキュリティ対策が整っているのか」、「万が一情報が流出した場合の対応はどうなっているのか」、といったポイントまで踏み込んで、サービスをチェックしておくことも必要でしょう。

まとめ

今回は、ASPサービスの概要や、サービスを導入する上でのメリット・デメリットについてご紹介しました。

ASPサービスは、インターネットを通じてソフトウェアを利用する仕組みのことで、ECサイトのカートサービスをはじめ、多くの企業で導入されています。

サービスのメリットとして、コストの削減に繋がる点や、導入や管理・運用の負担を軽減できる点が挙げられます。また、サービスを利用する際に、時間や場所の制約を受けない点も、大きなメリットと言えるでしょう。

一方でデメリットとしては、システムのカスタマイズができない点や、サービスを利用する上でネット環境が必須となる点が挙げられます。また、管理や保守をサービス会社に委ねるため、セキュリティの面でリスクを抱えてしまう点もデメリットと言えるでしょう。

ご紹介したように、ASPサービスには事業の効率化や成功に結び付くためのメリットが多く備わっています。一方で、ネットワークを通じたサービスにつきものな接続状況への依存性や、セキュリティ対策へのリスクはしっかり認識しておく必要があるでしょう。以上の点を踏まえながら、自社にとって最適なASPサービスはどこなのか、比較や検討を行っていきましょう。